【 razbliuto 】

孤独を愛せ、愛を貫け

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清朝末期の話はいつ読んでも辛い。なんだろう、この辛さ。最大勢力である漢民族やその他周辺の諸民族が様々な覇権や利権を争いながら築き上げてきた5000年の歴史と文化を持つ大帝国が、確かに終わっていく瞬間。大帝と言われた乾隆帝が退位して以降、少しずつ現れ始めた綻びが確実に国家を揺るがしていくあの様。崩壊は止められないと分かりつつも、伝統を保持するために奔走する人々。西や東の諸外国のように新時代の始まりを望む人々。そして国内の緩やかな崩壊を見計らったかのように攻め込んでくる欧州各国および日本。日本なんて嘗ての倭国だよ。卑しくて貧しい国。そんな国にすら気付けば敗北してしまうほどに、帝国は弱っていた。少しずつ、けれど確実に啄まれていく大帝国。嘗ての大帝国の威厳はもはやどこにも見当たらない。時代の流れと共に絶対王政が消え去る中で最後まで歴史を保とうとしたが故の末期の衰弱。なんだろう、この辛さ。

19世紀は世界的にもそんな印象を受ける。それまでずっと支配されてきた市民がやっと権利や権力、自由を得て、その歓びに打ちひしがれ、酔いしれ、やがて欲を持ち、欲がさらなる欲を呼び、やがて争いが起きていく。みんなが太陽に手を伸ばして、そして翼を焼かれた、勇気と傲慢の象徴とされるイカロスのような、そんな時代だと思う。「いやいや、やりすぎでしょ、ばかだなー」と思わないでもないけど、なんかすごく美しいんだよね。セピアだけどキラキラしてる。なんだろう、この感覚。

とりあえずこの本、読んでて辛い。けど美しい。混沌は美しいよ。とても、ね。この連休が終わったらしばらくまともな連休がないらしいので、堪能しようと思います。やれやれ。先週の喫茶店、また行こうかしらん。