【 razbliuto 】

孤独を愛せ、愛を貫け

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2018年2月下旬。それは突然すぎる訃報だった。俳優、大杉漣さんの死。なんだかんだでもう10年以上好きな人だった。頼りないサラリーマンや厳しいんだけど優しい不器用なお父さん、そして任侠ヤクザものまでなんでもやってのけるオールラウンダー。インタビューでもいつも気さくで、真面目な話の中にもクスッと笑うようなジョークを入れちゃうような人で、強面だし大御所だけどきっと優しくてお茶目な方なんだろうなと思ってた。蓮さんがでてるからという理由でいくつかドラマや映画を観てたくらい、好きだった。訃報が入ってきた日はショックが大きすぎてすぐには信じられなかった。というか正直今でも信じてない。そのくらい、青天の霹靂だった。

そんな蓮さんの最初のプロデュース作品にして最後の主演作、『教誨師』を観てきた。教誨というのは簡単に言うと受刑者に対して徳性の育成を目的として行うことらしい。私もこの作品のタイトルで初めて知った言葉。今回の「教誨師」には、6人の死刑囚に対して教誨を行うキリスト教牧師が描かれていた。それが蓮さん。本編の90%が狭い対話室でのやりとり。音楽も景色も何もないし、色んな感情が交錯するので本当に観てて苦しかった。とてもお勧めの作品だけど、心が元気な時に観ることを強くお勧めします。でないと死ぬ、本当に。死刑囚達との対話を通じて、「生きるとは何か」「人が人を裁くとは」という問題について言及していくんだけど、最後の蓮さんの台詞が素晴らしかった。「あれ、蓮さん死ぬこと分かっててこの作品撮ってた?」というくらい、教誨師佐伯としての言葉じゃなく、大杉漣としての言葉に聞こえた。遺言だと思った。すごく、すごく、重かった。蓮さん、貴方の最期の作品が本作で本当に良かった。私は貴方のような渋くて格好いい男性を好きになれて、本当によかった。役者なんて、役柄なんて、所詮は作り物かもしれないけれど、それでも貴方の背中は私にとってとても大きく、格好良かった。

あまりの重さに耐えきれず、観終わったあと魂が完全に抜かれてしまった。20分くらいフラフラしながら街を歩いてた。ここまでダメージくらった作品は初めてだったかもしれない。音楽も効果音も本当に一切なかった。なんならエンドロールですら流れなかった。繰り返すけど、心が元気な時に観てください、でないと、死ぬ。それほどまでに、重い。けれど、ぜひ観てみてほしい作品です。生きるとは何か。人が人を裁くとはどういうことなのか。日本が誇る大俳優、大杉漣が遺したメッセージを、ぜひ受け取ってほしい。

改めて、故 大杉漣さんの心からのご冥福をお祈りします。どうか、安らかに。合掌