【 razbliuto 】

孤独を愛せ、愛を貫け

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「早くあなたのことを忘れたい」と思っているうちは忘れることなんてないらしい。けれど私はそんなこと思ったことない。むしろ逆で、出来る限り君のことを覚えていられたらいいなと思う。それでも、月日には勝てない。忘れないようにしてたはずなのに記憶は薄れるし、忘れないように努力をしていたことすら、忘れてしまう。それでもふと、蘇ってくる記憶がある。そんな1週間だった。

「記憶」、正確には「思い出」というものは、人がいなくなった家に似ていると思う。人が住まなくなった家は、恐ろしいスピードで寂れていく。あれだけ温度があったはずなのに冷たく感じる。そうこうしているうちに、建物自体が傷んでしまい、もはや家としての機能を完全に失ってしまう。けれど、それでもだ。そこに家があることは変わらない。どれほど寂れても、ふとした瞬間に温度を感じてしまう。もう自分には関係ないことのはずなのに。もう忘れたはずなのに。昨日まで、なんならついさっきまで忘れていたはずなのに。

君は私の人生に関係のない人間になってしまったので、どこでなにをしていようがどうだっていい。極論を言えば、別に悪党に追われていたって知ったこっちゃない。不幸になれとも思わない。なぜなら私は、私の人生に関係のない人間の不幸を願えるほど暇でもなければ嫌な人間でもないからだ。もう会えなくていいし、連絡もこなくていい。それでも、時々は色々思い出し、「あの人元気かな」と想像することはきっとこの先も続くだろうし、そうであってほしいと思う。その想像は、その人が生きていて、その人の時間が流れているからこそ為せることだ。だから、悪党に追われながらでもいいから、とりあえず生きていて。どこかで元気で幸せでいてくれたらな。