【 razbliuto 】

孤独を愛せ、愛を貫け

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人の生涯が終わる時、そしてその人を天へ送る日は、どうか晴れていてほしいと思う。

2023年1月16日午前3時30分ごろ、大叔父が亡くなった。随分前から心臓を悪くしていたものの、享年97歳の十分すぎる大往生。私が最後に会ったのは、昨年2月に祖父が亡くなった時だった。

親戚といっても少し離れているので特別に濃い思い出があるわけじゃない。ただ毎年夏にお中元を渡しに行って、大叔父「おまえどっちや」私「姉の方です」というやり取りをして、バカでかい音量で流れている甲子園か相撲を観ながら「耳おかしなる…」と思い、「今年の暑さはほんまかなわんわ!」というのを聞くのが夏の恒例行事のようなものだった。あと「わしはもうあかん」に対して「うーん、まだいけそう…」と満場一致で思うのも。

うちは超が付くほどの長寿家系だけどその中でも一番上で、なのに一番声が大きくてとにかく元気な人という印象がある。大叔父はそんな感じだけど、奥さん(大叔母)は物静かな人で、よくこの2人が結婚してこの歳まで仲良くやってこれたなと思うけれど、そんな2人だからこそやってこれたのかなとも大人になるにつれ考えるようになった。そんな人が、一昨日会った時にはもう静かで、うんともすんとも言わなかった。人が亡くなるってこういうことなんだと、きっとこの先も何回も思うだろう。

昨年9月に入院して以来、もう家には帰れないと言われていたそうだった。歳も歳だし、なにせ元々心臓が悪い人なので悲しいけれど仕方ないか、そうだよねと思っていた。12月に施設に移って大叔母と一緒に過ごす予定が、たった4日で様態が悪化して12月下旬に再び病院へ。クリスマス、年末年始を控えている時期だったが、そこに訃報が重なる覚悟もしていた。しかしその時期も頑張ってくれて、みんながようやく落ち着いた頃に静かに旅立った。「あっけらかんとした人だけど、人にものすごく気を遣う人だった」と祖母は言う。みんなが年末年始をのんびり過ごせるように、最期の最期まで気を遣ってくれていたのかなと思う。ちなみに9月に入院していた時にうちの祖母も入院していた。たまたま同じ病院で同じ階だったからしょっちゅう話していたらしい。祖母は「義兄さんとあんなに話したのは初めて。色んなことを沢山話せて本当によかった」と言っていたが、今思えばあれも何かの縁だったんだと思う。

告別式には沢山の人が来てくださって、みんな涙してくださって、お寺の方からも「この地域の長老が亡くなられて寂しい」という言葉をいただいた。すごい人だったんだなあと改めて思った。

祖父と田舎も近いので、葬儀の手順や準備も特に大きな変わりもない。ああ、こんな手順あったなという懐かしさもない。すべてたった11ヵ月前に見た光景だったのが、桜の花びらが日を増すごとに散っていくようなもの寂しさと似ていた。

「臨終」という言葉は「終わりに臨む」と書く。すなわち、亡くなった日が終わった日ではなく、これから徐々に死に向かっていくというのが真言宗の考え方だ。仏になるためにこれから修行を重ねなければいけない。そして修行の成果と、生前の行いを鑑みて次の輪廻の行き先を決める。初七日、二七日(ふたなのか)、三七日(みなのか)というが、これは7日ごとに次の行き先を決める審判のこと。そして四十九日をもって、現世を終え、仏様のもとに辿りつく。

・・・という考えがなぜかうちの家系には浸透しているので、出棺の際も「さよなら」じゃなくて「行ってらっしゃい。私たちも頑張るから、〇〇(故人)も修行がんばってよ」と送り出している。我が親族ながら良い親族だなと思う。

どんな命にも終わりがあるなら、なぜ「生命」なんてものがこの世界に存在するんだろう。子孫をいくら繁栄させたとて、自分の子孫を見届けられる期間なんて限られている。誰のために、何のために、これだけ多くの生物がこの世界に存在して、くだらない生存競争を繰り返しているんだろう。最近はそんなことをずっと考えている。

ただひとつ思っているのは、生きているこの時間こそが夢なんだろうということ。寝て起きた時に「夢を見たような気がする。あんなでこんなだったけど、ちゃんとは覚えてないや…」くらいの感じになるんだろうなと、なんとなく思っている。そうであればいいとも思う。

人の生涯が終わる時、そしてその人を天へ送る日は、どうか晴れていてほしい。桜の木の下じゃなくていい。生涯を全うしたことを祝福するような空。旅立つ人も、遺る人もみんなが「このままどこまでもいけそうだ」と思えるような空がいい。

おっちゃん、本当に長い長い生涯お疲れ様でした。おじいちゃんに会ったらどうぞよろしく。いっぱい喋っていっぱい好きなことして好きなもの食べて、時折わたしたちの様子見ながら、楽しく過ごしてくれたらいいな。

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