【 razbliuto 】

孤独を愛せ、愛を貫け

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感情の記録。幼馴染が男性になった話。

 

そもそも「幼馴染」っていつからの知り合いを指すのか分からないけれど、あの子は間違いなく幼馴染と呼んでいいだろう。記憶にある一番最初に行った友達の家はあの子の家だ。

社会人になって数年、最後に会ったのはもういつだっけ?時々連絡を取ってはいたけれど、こちらも色々あり連絡を取っていなかったこの数年間に、なんか色々あったらしい。連絡を取らなかったのは単に私も調子が悪かったというのもあるけれど、別に少し連絡取らないくらいで切れる絆ではないと思っていたからだ。そういう理由で連絡を取らない人が沢山いる。まあこれは補足情報なのでどうでもいいんだけど…

学生の時から、いつかそういう日が来るかもしれないなあと思っていた。なので、実際にそう聞いて特に大きな驚きはなかったのだけれど、なんとも形容しがたい感情は残っている。なんだろう、寂しいのかな。数年会っていない友達は何人かいるけれど、大体の姿が想像つく。10年後であっても、めちゃくちゃ痩せたり太ったり別人レベルに整形したりしない限りは何となく想像つくし、多分実際会っても「あの子だ」って分かるだろう。けど性別が変わるとなると何も想像つかない。女性ホルモンがなくなって、もしかしたら男性ホルモン注射を継続的にしてるかもしれなくて、その上に加齢もあって…となると、もう今の姿すらよく分からない。今日何回もFTMした人の写真を見ていたのはきっと、自分の記憶に残っている人と、未来で再会するかもしれない人が、同一人物なのに見た目がまるで別人であることの受容をしようとしていたのだと思う。あと、記憶の中のあの顔はもう面影もないかもしれないという寂しさ。(多分これは人による。何となく面影が残っている人もいたし私にはまったく分からない人もいた)

前述したとおり、いつかそういう日がくるかもな~とは学生時代からうすらぼんやり思っていた。社会に出てみると女は思ったより女であることを求められる(ように感じる)。性自認に全くずれのない私ですら、たまに女であることに息苦しさを感じるので、もしかしたらあの子は結構きついかもなと思っていたし、不謹慎だけどそれが原因で自殺とかになったらどうしようとまで思っていたので、ずっと気に掛けていた。とりあえずそうならなくてよかった~というのが率直な感想。あとこの道を選べてよかったね、すごいねという賞讃と尊敬の気持ちもある。

コロナも明けたしそろそろ会いたいな、連絡しようかなと思っていた矢先の出来事だった。またいつか会えたらいいなと私は本当に思っているけれど、向こうはどう思っているか分からないので一旦遠くから様子を見ていようと思う。半年後でも1年後でも3年後でも、最近どうなの~とか、仕事なにしてんの~とか、あの芸人おもしろいよね~とか、遊びにいくからおすすめのお店連れてってよ~とか、そういう話がしたい。

昔からややこしい界隈にいたのでLGBTQの人とは思春期の頃から時々接していた。なのでそこに対しては「ああそうなんですね」くらいしか思わないのだけれど、幼馴染が性転換したのは初めてで謎の感情が現れたので記録してみた。

学校ではすれ違うときに「よっ」とあいさつするくらいなのに予備校帰りにゲラゲラ笑いながら23時の地元を一緒に歩いた。普通に歩けば10分の道を30分かけて帰ったあの時間は、今もきっとこの先も私の宝物だ。そしてそんなかけがえのない時間をくれた人は私にとってずっとずっと大切な人。また会えますように。しあわせでいてくれることを、遠くから祈ってる。